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モーツアルト生誕250年


モーツァルト肖像画 今年は生誕250年ということで、モーツアルトが脚光を浴びている。個人的には没後150年を迎えるシューマンにももっと関心が集まってもいいと思うが..。それはともかく私にとってモーツアルトも大好きな作曲家のひとりには違いない。ジャンルとしては、一般には歌劇や、交響曲、管楽器のための協奏曲、ピアノ協奏曲などの人気が高いと思うが、私はこのうちピアノ協奏曲が一番モーツアルトらしいジャンルであるように思う。作曲年代もモーツアルトの短い作曲家人生をほぼカバーしている。

 一応27曲とされる(最初の幾つかは編曲に過ぎない)協奏曲のうち、19番以降の9曲はとりわけ有名で、演奏会などで取り上げられることも多く、耳にする機会が多い。ところが、演奏会でモーツアルトのピアノ協奏曲に感動したという経験は驚くほど少ない。技術面で完璧に演奏されたとしてもそれだけで聴衆を感動させることは出来ないのだ。むしろモーツアルトの書いたピアノ・パートはさほど高度の技術を要求されるものとは思わない。

 そんななかで、私の記憶に強く残るのは、最晩年の園田高弘が井上道義指揮の新日フィルと競演した20番の協奏曲。週末の午後に催され、名曲コンサートと冠された、初心者向けの演奏会であったので、本来演奏家にとっては集中力を発揮するには厳しい条件であったが、おおいに感服し、同時にそれまで園田高広を余り熱心に聴いてこなかったことを後悔した。テンポにしてもとりわけ奇をてらった部分があったわけではない。高齢でもあり、技術的に「バリバリ弾く」というわけでもなかった。ミスタッチなどもあったかもしれない。淡々とした演奏であったが、それでも私はぐいぐい引き込まれた。枯れているようで、それでいて瑞々しい、生き生きとしたモーツアルトだった。

 私はこのときモーツアルト演奏で不可欠なのは、楽譜を読む以前の、モーツアルトに対する共感、同化だと感じた。モーツアルトに対する深い理解と愛情があり、これらを演奏で示せないと聴衆を感動させることは出来ないのだと思う。だから技術の巧拙は関係ないと思う。園田高弘の演奏が終わって、拍手が起こるなか、私はコンサートホールの客席を思わずぐるっと見回した。なぜなら、モーツアルトがこの場に居たなら、きっと立ち上がって「ブラボー」と声をかけるに違いないと思ったから...。

守屋 悦男



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