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| 「アメリカ国立公園紀行−バスで巡る大自然の旅」 小林正典 |
| 11月/05 |
| 農業州カリフォルニアを走る ヨセミテ国立公園の南口から外に出る。これで我々の「公園巡りの旅」もいよいよ終りである。オークハーストの町まで下りて、OKAという和食レストランで幕の内弁当風の昼食を食べる。以前メキシコ・レストランだったのを買い取ったとかで、外装内装ともメキシコ風の奇妙な和食店だが、弁当の味も桃川という冷酒も先ずまずだった。店にはサラリーマン風の白人客がそこそこ入って居て、本日のランチ・スペシャル“皿盛りのカツどん”とやらを食べていた。ボリュームたっぷりでお値段は7ドル50セントである。 午後1時20分、オークハースト出発。これからロスまで500キロ近くを走らなければならない。フレズノまで41号線、そこから99号線に入り、やがてハイウエイ5号線に乗った。これからカリフォルニア州の南半分を縦に走る。 午後3時、ヴィサリアの町でトイレストップ。ここからロスまでは300キロだが、延々と農業地帯が続いている。実家が農家で若い頃は農業青年だったという運転手のダン。彼に訊くと畑の作物のことは何でも分る。クルミ、ぶどう、桃、オレンジ、陸稲、ピスタチオ、トウモロコシ、アルファルファ、アーモンド、コットンなどの畑が次々に出現し、どの畑もその広さは半端ではない。牧草地や乳牛の牧場、酪農工場なども規模が大きい。 草の根の民主主義とやらで、住民投票に頼った法規制をやり過ぎたり、カリフォルニアはいま政治的には行き詰まっている。動きの取れない州知事のリコール選挙に、シュワルツネッガーをはじめ百人以上が立候補するなど、まさに末期的症状である。お祭り選挙の末に、シュワルツネッガーが当選するのだろうが、彼に政治が出来るのだろうか。しかし、全米一の農業州だと言ったマサさんの言葉通り、沿道の農場風景はスケールと多様性に富んで、底力を感じさせる。これでは日本の農業など余程頭を使わないと太刀打ち出来ない。 ハイウエイの中央分離帯には延々と夾竹桃が植えられていて花が美しい。だが、バスやトラックはOKだが、乗用車から反対車線が見えにくいという理由で、最近は取り除いているらしい。「皆がスピード守れば、夾竹桃も抜かれずに済むのにね」とダンが皮肉っぽく笑った。これも住民投票の結果だろうか。 サザン・パシフィック鉄道の線路が見えて、デラノの町を通過。あとロスまでは200キロである。午後4時過ぎベイカーズフィールドを通過すると、景色は次第に山岳地帯に変った。テジョン峠を越えて、ヴァレンシアという町のコンビニでトイレストップ。絶叫マシンで有名な遊園地マジック・マウンテンの派手な施設が向こうに見える。昔“ぶら下がり健康法”というのが流行ったことがあるが、コンビニの脇の街路樹の枝に何の気なしにぶら下がって背筋を伸ばす。20秒づつ2回ぶら下がったら、長距離バス・ライドで溜まった背中の疲れがウソのように消えてしまった。これは大発見である。 やがて、バスはハイウエイ5号線から405号に入った。ハイウエイの一番左側の車線は、2人以上が乗っている車だけが走れる優先レーン「カープール・レーン」である。渋滞の解消にまでならなくても、見ていると相当交通の効率アップには役立っているようだ。これは日本でも取り入れるべきだろう。サンタモニカ・フリーウエイに入り、ロスのスカイラインが見えてくると、南カリフォルニア特有の大気汚染も近づいて来て、空気が次第に濁ってきた。 この旅行は全行程約4千キロ、各公園内の移動を加えれば5千キロを超えただろう。だが、平均年齢は決して低くないのに最後まで団員23名みんな元気である。余程、胃袋も丈夫、背骨もビテイ骨も丈夫な人ばかりが揃ったらしい。 謙虚な気持ちで旅を終ろう 真面目な話、今回の旅行では啓蒙されることが多かった。――人類が地球上に出現するずっと以前、何十億年という時の流れの中で、地球というこの惑星が経てきた凄まじい変動の足跡を覗き見ることができた。今日も動き生き続けている地球、その地底からの熱い鼓動を感じることもできた。人類が足を踏み入れる以前の、大地の手付かずの美しさや、動植物の豊かな世界に想いを馳せることもできた。人間の知恵よりも、自然の持つ独自の仕組みの方が優れていること。動物の生態系、植物の植生など、自然界ではバランスが基本だということ。国立公園のように管理された自然であっても、慎重に俗化を防ぎ本来のバランスを永続させなければならないこと。人類だけの横暴は許されず、我々は常に謙虚でなければならないこと。――大自然を巡り歩いて、こんな感想を持てただけでも、ビテイ骨を擦り減らした価値は充分あったと思う。 午後6時40分、ロス特有のラッシュをすり抜け、バスは空港近くのホテルの玄関にたどり着いた。大自然の旅の軌跡を反芻しながら、今夜は久しぶりに大都会の夜を楽しもう。ただし、謙虚さだけは忘れずに。 (おわり) |
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