グアム日本人会ホームへ 会員の広場
日本人会ニュースグアム日本人会年間活動・行事紹介秋祭りクラス・同好会・サークル活動紹介
日本人学校・補習授業校図書室からコラム・暮らしのページ総領事館からのお知らせ会員の広場リンク


「グアムに盲導犬、初来島」 船橋拡至
1月/02


事の始まりは我がメル友Tさんからのメールである。「私の友人山本さんが視覚障害者で盲導犬ケイルを連れている。グアムへ来たいのだが、そちらのホテルで受け入れてくれるか。また、盲導犬の入国許可はパブリック・ヘルスの管轄であり、自分で尋ねたが要領を得ない。手を貸して貰えないか」
ホテルとしては、ペットは不可、しかし盲導犬はペットにあらず。と言う事は知っていたので、「やってみましょう」と返事をした。ここからグアム初の盲導犬上陸作戦が始まる。
早速ホテルスタッフがあちこちあたり、盲導犬が宿泊する事は問題なし、と回答してきた。トレーニングマネージャーのCは、早くもグアムの障害者支援団体から、「盲導犬は公共施設へ入る事が認められています」と言う証明書を貰ってきた。「山本さんとケイルが嫌な思いをしないように、これを持ってもらうんだ」と張り切っている。

次はいよいよ入国許可証だ。パブリック・ヘルスとしても困ったようだ。世の中に盲導犬がいる事は知っている。しかしグアムでは見た事が無い。それが日本から来るので入国許可証が必要だ。それを自分達が発行しなくてはならない。グアムのパブリック・ヘルスで初めて、日本からの盲導犬入国の書類審査と入国許可証発行。さあ大変となって、ここからはお役所仕事の悲しさである。初めて引っ張り出してきた資料に基づきあれこれ言ってくる。特に参ったのが狂犬病に関する事項。日本とグアムはもう随分前から狂犬病の無い地域として認定されている。しかし資料は証明書が必要とうたっている。そうなると「持ってこい」、となる。その旨日本サイドに連絡し、獣医さんから証明書を発行してもらう。と今度はグアム入国後に狂犬病の検査を現地の獣医で受けなくてはならない、と来た。突っ込んで聞いてみると、検査には血液を採取しカリフォルニアへ送り、結果が出るまで2週間だ、と言う。ちなみに山本さんとケイルは4泊5日の旅。検査結果が出たときにはもう日本へ帰ってしまっている。どうしたものかとなって、すったもんだの末、これだけは避けられず、こちらへ到着後、獣医で検査を受ける事となる。彼らの帰国後、出た結果はもちろんシロ。何か釈然としないが、向こうも初めての事だけに、マニュアルに書いてある事は全て要求してくる。

このような遣り取りを経て書類が揃った。全ての書類に英訳を付けてパブリック・ヘルスへ持っていき、チェックしてもらう。ここで付け加えておくが、これらの作業でパブリック・ヘルスと対応したのは私ではない。当ホテルの総務部長を勤めるFだ。彼はデパートメント・オブ・エデュケイションを26年間勤め上げたチャモロ人である。当ホテル創立以来、グアム政府の許認可関係は全て彼が取り仕切っている。グアムでは政府からの許認可が必要な場合、日本人が、これはビジネスだから、と言って当たり前のような顔をして訪れても相手にされない事がある。よしんば相手にされても、なかなか事が前へ進まないことが多い。そのような時、彼の存在は大変貴重である。彼が出向いて行って、チャモロ語でゴニョゴニョゴニョと話すと、いとも簡単に問題が解決する事がある。その彼がパブリック・ヘルスから帰ってきた。なぜか浮かない顔をしている。嫌な予感がしてきた。今度はなんだ?どうした?と聞くと、彼が憂鬱そうな顔をして話し出した。日本から送られた書類の英訳について、書式が違うとクレームが付いた。パブリック・ヘルスが言うには、日本の書類と同じ書式で英文のものを持ってこい、と言っている。何ぃい?皆様もこれを読んだだけではご理解頂けないであろう。
つまりこうだ、日本の運転免許証をコピーしたと思って欲しい。その中で数字と顔写真以外の部分全てを英語に直したものが必要と言っているのである。名前の欄、本籍の欄、それぞれを区切る線、全て日本語バージョンと一緒。左右に二つ並べて同じ大きさ同じ仕様の英訳である。チェックしてもらう為に提出した英訳も我らなりに気を遣い、日本語の各項目の頭に番号を付け、その順番通りにレイアウトし英訳を作ったのだが、そのくらいの努力では認めてもらえない。言い出したら聞かない彼らの事である。そこを何とかお願いします、なんて言ったって通じる訳が無い。オロオロしながら机の隅にあった修正液を取り出し、日本語の部分を白く塗りつぶしタイプライターでパチンパチンと英文を打っていると、Fと机を並べる広報部のエース、Lが登場した。彼女はFから事の経緯を聞きつけて様子を見に来てくれたのであった。私の作業を見ていたLが一言、 「私がスキャンして作ってあげる」Lの頭の上には輪っかが浮いて、背中には白い羽根が生えていたのは言うまでもない。彼女は、それは見事にコンピューターとスキャナーを、まるで魔法のように操り、約2時間後どこかの偽造団からスカウトされそうな立派な英訳書類を作り上げた。再びFがパブリック・ヘルスへもって行き、明るい笑顔で帰ってきた。問題なしである。

次はTさんが翻訳の公証を受ける為、領事館へ持ち込む。領事館では出来る書類と出来ない書類があるらしい。出来るものだけお願いして、その他の書類はポストネットへ持ち込む。ポストネットでは、「へえ、盲導犬かあ」とか言いながら次々とシールを打ってサインをしてくれる。今迄の苦労に比べると気が抜けてしまうような簡単さだ。
事務所に戻って再チェック。落しはないようである。Fがパブリック・ヘルスへ走る。実はタイムリミットギリギリなのである。盲導犬が来るのは明後日なのだ。ここで何か有れば、日本へ連絡し獣医さんに何がしの証明書を発行してもらい、Lが英訳を作り、Tさんがポストネットへ行かなくてはならない。そのような事態になれば恐らく間に合わなくなってしまう。後が無い。Fが帰ってきた。七色に光る入国許可証を携えて。早速山本さんに連絡し、書類をファックスする。山本さんもホットしたようだ。ここでコケたらツアーキャンセル、それも最悪の前日キャンセル。考えたくも無い事態である。

さて到着日の午前中、航空会社 の現場責任者から電話が入り、空港へ書類を持って行く。ささっと目を通して、完璧です、との事。あとは到着を待つばかりである。一旦ホテルへ戻り、部屋のチェックを済ませ再び空港へ行く。飛行機は定刻通り到着している。
ガラス戸が開くたびにドキッとする。来た!出てきた!無事入国だ!山本さんは多少緊張しているようだ。盲導犬のケイルは、我れ関せず、と山本さんに付き添って歩いている。さすが厳しい訓練を受けた盲導犬だ、浮ついたところが無い。完璧に仕事中である。
一通りの挨拶を済ませ車に乗り込む。そこでやっとホットしたのか山本さんが涙ぐんでしまう。無理も無い、山本さんとケイルだけでの初海外旅行だ。おまけに入国審査の書類を揃えたのは我々ズブの素人である。二日前まであれが必要、これが欲しい、とやっていたのである。空港の外へ出るまでは気が休まらなかったに違いない。Tさんも嬉し涙を流している。私も、けど照れ臭いので前を向いてトボケてしまった。こうやってグアム初の盲導犬上陸作戦は成功したのである。


これを読まれると、さぞパブリック・ヘルスは意地悪だと思われるが、彼らの名誉の為、一つ書いておきたい。タイムリミットギリギリで我々がドタバタしていた時、パブリックヘルスでは入国許可証に必要事項を記載し、責任者が署名を済ませ、我々の書類が到着するのを待っていてくれたのである。どうやら我々の努力を認めて頂けたようである。そしてそれからの5日間、グアムの人々は日本で自慢したくなるほど、山本さんと盲導犬ケイルに暖かく優しかったのである。



会員の広場トップへ戻る


グアム日本人会ホームへ
ホームへ戻る



日本人会ニュース | グアム日本人会について | 年間活動・行事紹介 | 秋祭り | クラス・同好会・サークル活動紹介 |
日本人学校・補習授業校 | 図書室から | コラム・暮らしのページ | 総領事館からのお知らせ | 会員の広場 | リンク



Designed by Ko'Ko' Planning & Co.

Copyright © 2000-2008 JAPAN CLUB of GUAM, All Rights Reserved.